実習で出会った患者さんとのこと

初めて受け持った患者さんとの日々は、

まるで夢の中の出来事のように、ところどころしか覚えていません。

でも、たしかに感じた “頼られる喜び” や “そばにいる覚悟”。

あの方との出会いが、私の看護の芽をそっと育ててくれた気がします。

看護学生時代の実習で、内科病棟を担当したときのこと。

私にとって初めて受け持った患者さんは、

肝硬変で黄疸が出ていて、視覚にも障害のある高齢の女性でした。

その方は、病室のベッドで静かに過ごされていましたが、

どこか私を頼りにしてくださっているように感じました。

毎日、声をかけたり、そばに座ったり。

どんなふうに接すれば安心してもらえるのか、

あの頃の私は、ただ一生懸命に考えて行動していたと思います。

もう30年も前のことなので、

実は、何を話したのかはっきりとは覚えていません。

けれど、患者さんと“これからのこと”を語りながら、

2人で涙したような記憶だけは、ぼんやりと心に残っています。

実習が終わってしばらく経ったあとも、

私はその方に会いに行ったような気がしています。

当時はまだ個人情報の扱いも緩やかで、

患者さんに自宅の電話番号を伝えていたような記憶があって──

もしかしたら、その方から電話をもらったこともあったかもしれません。

今では記憶の輪郭もあいまいだけど、

あの時間だけは、たしかに私の中に存在していて、

「看護って、そばにいることから始まるんだ」

そんなことを教えてもらった実習だったように思います。

【ひとことメッセージ】

人の心にそっと寄り添うことは、

とても静かで、目に見えないことかもしれない。

でも、そんな看護が、確かに誰かの力になっていると信じています。

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